彼女について

好きな本だけど人にすすめる本ではない、でも手放せないお守りみたいな本、というもののひとつに、吉本ばななさんの「彼女について」があります。

※ネタバレを含みます。

 

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主人公が久々に再会した男の子と捜し物をする、みたいな話なんですけど、ふんわり穏やかなお話の底に薄気味悪さが漂うような感じで物語が進んでいって、終盤に主人公が「もう自分は生きていない」ことを思い出す、という話。

はじめて読んだときはホラー小説を読んだような独特すぎる読後感だったのですが、自分に起きた惨劇を思い出した主人公が「なんてついてないんだろう。」というところが印象に残っていました。まいったなぁー、みたいな感じのトーンで。

受け止め方ライトだなー、と。

 

あとから知ったのは、この小説が、秋田で起きた連続児童殺傷事件を裏テーマとして書かれたものであるということ。

一片の救いもない話のなかで、主人公がフォーカスしているのが悲劇ではなくて、むしろ悲劇をほどほどに流しつつ、日常の食事や誰かと他愛のない話をすることや日々の買い物のことなんかであること、そのあたりが吉本ばななさんだなと思いました。

どれだけ悲惨でも、それを声高に語らない人もいる。それでもちゃんと伝わる人には伝わるでしょうし。

それから、裏テーマを知って、物事をどこからどう見るか、何を語ってどう昇華させるか、表現っていうものについても考えさせられました。

 

いつかのインタビューで、

ものすごい悪意に触れたとしても、そうじゃない大切な人との日常に心を寄せていたい、「日常の生活こそ反逆なんだ」という意味のことを言われていて(一部意訳かもしれないですが)、とても共感したんですね。

人間なので、書かれているものすべてを好きなわけではないのですが、何冊か自分にとって特別な本がある作家さんです。

 

と、夜にお風呂で読み返したので感想書いてみました。

今週はのんびりめだったので(昨日の朝はさておき)穏やかな金曜です。

週末を楽しみに今日も過ごそう。